その冷たい手、温めてあげる。
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「おっはよー…って、未菜もう来てたの!? 早いじゃん!!」
朝から元気なアキコはあたしの姿を見つけるなり机と机の合間を縫うように小走りでやってきて、前の座席に腰を下ろす。
「おはよ」
あたしは手元から視線を上げると、アキコがニタニタと笑みを浮かべてあたしの手元と顔とを交互に見比べてきた。
「未菜さん、初めての彼氏だからってベタ過ぎやしませんか? 手編みのマフラーなんて」
「いいの。ずっとこういうことしてみたかったんだから」
あたしは手元に視線を戻すと、棒に黒毛糸を絡みとってリズミカルに編んでいく。
クリスマスに熊田先輩に渡そうと早めに取り掛かったマフラー作り。
母親に手解きをしてもらいながら人生初の編み物。
最初は苦戦したものの、後半にもなるともう慣れたものだ。