その冷たい手、温めてあげる。


これじゃ手袋が邪魔をして温めてもらえるわけがない。



「先輩、ちょっと1度離しますね」



あたしは繋がれた手を解き、繋ぐほうの手袋を外してカバンに押し込むと、再び先輩の手を握った。


目を見開いていた先輩ににこっと微笑みかけると、先輩はあたしから視線を外して指で鼻の頭を掻いた。


あたしはふふっと笑う。


繋がれた、あたしの手をすっぽり包んでしまう大きな手。


ずっと外に晒されていたとは思えない程の温かい手。


あたしの平均的な平熱の手を温めてくれる。


あたしがずっと求めていたもの。



……でも、何だろう。


何か体が訴えてくる変な感じは。


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