その冷たい手、温めてあげる。
あたしはブンブンと頭を振る。
違う、違う。
今日は先輩とお祭りなんだから。
「どこかで手袋買ってから行こうか?」
「うんん。大丈夫です。それよりお祭り行きましょ。もう屋台出てますよ!」
あたしは頭に浮かんだ冬馬の残像を振り払うように先輩の手を取ってお祭り会場へ向かった。
お祭り会場はすでにすごい人で、この町内のどこにこの人たちが隠れていたのかと思うほどの賑わいだった。
冬馬とはぐれないよう冬馬のコートの裾を掴んで、なおかつ行きかう人とぶつからないように気を使って歩いていたのが去年まで。
でも今年は
はぐさないようにとしっかり握りあたしを引っ張ってくれる大きな手。
見上げれば大きな背中が行きかう人から守ってくれているよう。
去年までと全く違う。
景色さえも違って見える。