その冷たい手、温めてあげる。
去年まではから揚げが先だ、焼きそばが先だって言い争っていたけど…
「未菜さん、ここのから揚げ屋にしようか」
顔を上げると先輩はそこそこ繁盛してそうなから揚げ屋さんの前で立ち止まっていて、から揚げを2つ注文しているところだった。
「お、兄ちゃんずいぶん立派な体してるね。こんな可愛い彼女さん連れちゃって。兄ちゃんやるねぇ」
頭にタオルを巻いた中年の店主が陽気に声をかけてきて、熊田先輩は店主の言葉にまんざらでもない表情で鼻の先を掻いていた。
頃合になったから揚げがカップに入れられていく。