その冷たい手、温めてあげる。

「あい。お待ちど。可愛い彼女にはから揚げ1個おまけしといたからな」


「ありがとうございます」



店主から商品を受け取ると、から揚げの熱が紙カップを通して冷たい手をじんわり温める。


温かい…。


から揚げの温かさにほっとしていると、そんなあたしを優しく見る熊田先輩の目があった。



「あ、すみません。あたしお金…」



慌ててバックからお財布を出そうとすると熊田先輩の手がそれを制止する。



「これぐらい自分におごらせて」


「でも…、じゃお言葉に甘えて」



あたしの言葉にやけに小さく感じるから揚げの紙カップを手にした先輩が優しく微笑む。


冬馬じゃ、絶対に割り勘だ。


…ってあたしさっきから冬馬と比べてばかり。


考えないようにしなきゃと思えば思うほど、お祭りの中の冬馬を探し出そうとしてしまってる。



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