その冷たい手、温めてあげる。


「先輩、射的やりませんか? あたしこう見えて得意なんです」


「いいね。じゃ射的屋さんに向かおうか」



先輩はさりげなくあたしの空いてる手を握った。


でもそれは手袋の上からで…


そうだった。手袋をしてたら相手の体温は感じれないんだった。


冬馬はお祭りにいつも手袋をしてこない。


『手袋してたら箸が持ちずらくてやきそばが食えないだろ』


あたしは先輩に握られた手元に視線を落としながら、冬馬の言葉を思い出していた。



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