その冷たい手、温めてあげる。
「いえ、ちょっとから揚げとチョコバナナでお腹いっぱいになっちゃって…。先輩良かったら食べます?」
「いいの?」
遠慮がちに、でも嬉しさの込められたその言葉に頷いて、食べかけのお好み焼きが入ったパックを先輩に手渡す。
あ、先輩、手袋外してる。
そうだよね、手袋したままじゃ食べにくいよね。
……冬馬も食べる直前に外せばいいのに。
寒さで真っ赤になった冬馬の手を思い出す。
あたしの今の手も、冬馬と同じだ…。
息を吹きかけても手を擦り合わせてみても、全く温まりやしない。
暗闇の中にほんわりと灯りをともす提灯をぼんやり眺めていると、左手に温もりが触れ、温かさに包まれた。
手元を見ると、手袋を外した先輩の手があたしの手を上から覆っていた。
見上げると、すっかり食べ終えた先輩はあたしと同じように提灯を眺めている。
何をしても温まらなかった冷たい手が、先輩の手を伝って温かさが流れ込んでくる。