その冷たい手、温めてあげる。
「……ごめんなさい」
「……」
「……あたし、やっぱり…」
「言わなくていいよ」
そこまで言って、先輩の優しさの込められた声に遮られた。
「未菜さんの心の中には俺じゃない別の人がいるんだよね?」
驚いて顔を上げると、先輩は小さく息を吐いた。
「本当はね、知ってたんだ。幼馴染の存在も。未菜さんの事、気にして見てたから。
…だから知ってた。
その幼馴染の子が未菜さんに向けている優しい視線に。未菜さんは気付いてないようだったけど。でも、2人の間には他人が入れる隙間なんてなかったんだ。
だから告白を受け入れてもらえた時すごく驚いたけど、でもチャンスだと思った。未菜さんの中にいる彼を追い出せるかもしれないって。…でも、やっぱり無理だったみたいだ」