その冷たい手、温めてあげる。
先輩は遠くを見つめ、気持ちを落ち着かせるようにもう一度小さく息を吐いた。
「…気付けたみたいだね。自分の気持ちに」
優しい、優しい熊田先輩の笑顔。
いつでも優しかった先輩。
それなのにあたしの中は冬馬でいっぱいなんて…。
申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「自分の事は気にしなくていいからね」
先輩はあたしの気持ちを察したように、少し声を明るくした。
「未菜さんと過ごせた一ヶ月間すごく楽しかったし、後輩たちにも沢山自慢できたし。だから困った顔しないで」
どこまでも優しい先輩。
あたしはこの人と付き合えて本当に良かった。
そう心の底から思える。