その冷たい手、温めてあげる。




あたしは先輩と別れ、ある場所目指して走っていた。


そこに冬馬がいる保障はない。


例の女子生徒といるかもしれないし、お祭り自体に来ていないかもしれない。


それでも向かわずにはいられなかった。


毎年2人で花火を見るあの桜の木の下へ。


花火はすでに始まっていた。


暗闇の中を打ちあがる花火の明かりを頼りに進んでいく。


お祭り会場から少し離れた桜の木。


桜の木の前で立ち止まる。


――見つけた。


太い幹に寄りかかって花火を見上げていた細いシルエットがゆっくりこちらを向く。



「やっぱり来た」



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