いつか会えるね
車が坂を登っていく。

「あっ。うちはねぇ、ここの角を曲がってすぐなんだよー。」

…やっぱり麓の方だった。

坂の上にも、銀行があるから、そっちだったらいいなぁって思ってたのに…。

「…はい。」

「…ほんと、気にしないで?
どうせヒマだからね。女の子乗せてた方がいいじゃん?」

「え?ヒマなんですか?おうちに待ってる人とかいないんですか?」

「…いたらいーんだけどねぇ。」

「あれっ。変なコト聞いてすみません。」


プッと田中さんが吹き出した。

「篠原さん、謝ってばっかり…。」

「あっ。そうですねっ。…すみません。
あれっ…。」


「また…。」


田中さんが、声をたてて笑う。


「ヤバイっ。ツボにはまった…。」



その後も、田中さんは、ずっと笑いっぱなしだった。




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