願い事
第一章
君が私にキスをした
『あなたの事なんか、信じられるはずがないじゃないの』
私がこの言葉を聞いたのは--
確か三歳の頃だった。
今でもこの言葉は私の耳に残る。
母の残像も消えない。
『お前なんかいなくたって、この家は俺が守って行けるんだよ』
父が母に交わした言葉。
『私がいなくてもいいの?それじゃあ莉子も、あなたに任せるわよ?』
『任せろ任せろ。早く出てけ』
父が発した言葉。
『さようなら』
--母がこの家で、最後に発した言葉。
私はこの父と母の会話を今でも覚えてる。
この会話から母が家を出てから、もう母は11年帰ってきていない。