新撰組のヒミツ 壱
「以前はお助け頂いて、ありがとうございました! よければ、以前の御礼をさせて下さいませんか?」


丁寧に初は頭を下げた。以前、立ち去り際に御礼はいいと言ったのに、どうやら彼女はどうしても御礼がしたいらしい。


「――頭を上げて下さい。とりあえず、場所を変えましょう」


周りの視線が集まっている事を意識して、光はそう提案した。


「……はい。でしたらわたしの店にお越しください。呉服屋ですので何かあつらえます」


「――いいのですか?」


「是非。そちらのお二人もご一緒ですか」


そう言って初が目をやったのは、未だに話をしている沖田と藤堂の2人であった。


沖田とは面識がある筈なのだが、お互いがお互いに誰なのかが分かっていない。沖田には興味がなく、初には光しか見ていなかったのだ。


だが、そのようなことを光が知るはずもない。


「ええ、まあ……」


どうしたものか……、と曖昧に言う光を促した初は、歩いてすぐそこにあった呉服屋ののれんをくぐった。
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