新撰組のヒミツ 壱
静かな初の問いに、一瞬だけ沖田と藤堂の動きが止まった。それを目ざとく見つけた光は、再びにっこりと微笑んだ。


「――私は会津藩に仕えています」


嘘は言っていない。壬生浪士組は、会津藩主松平容保の御預かり身分である。


それならば、間接的に会津に仕えているということにならないだろうか。


だが、壬生浪士組は京の人間から「壬生狼」「人斬り集団」と呼ばれ、毛嫌いされているのだ。


その上監察は、潜入捜査が出来なくなるため、出来るだけ情報を漏らさない方が得策なのだ。それで光は曖昧な言葉を選んだ。


「会津藩士なのですね」


目を輝かせて見上げてくる初を見て、光は僅かに胸を痛めながら、無言で薄く笑った。


「井岡様、こちらはどうでしょうか」


その時、女将が光に見せたのは、黒地に繊細な桜が描かれている上質な着流しであった。


次に見せたのは、無地ではあるが、上品な藍色の色合いをした、綺麗な着流しであった。



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