新撰組のヒミツ 壱
未だに先生のことを吹っ切れない自分は“男”であるというのに、普通の女以上に女々しいではないか。そう考えると自分に情けなさを感じる。


(そもそも吹っ切れていたら……復讐なんて考えないよな――……)


父とも兄とも慕った師。光を救い、育ててくれた。分かりづらいとはいえ、確かに愛情を感じていたのだ。


――そんな彼の面影を、今度は土方に重ねてしまいそうになる。


考えに沈み込んでいた光は、藤堂の「光?」という呼びかけに、数瞬の間反応する事が出来なかった。


「――あ……すみません」


「大丈夫? ぼーっとしてたみたいだけど。もしかして、疲れちゃった?」


いきなり連れ出したからかな……?と、少し顔を歪めた藤堂は、不安げな表情で光を見た。


「……いえ、大丈夫です……」


「井岡さん? 取り敢えず、帰りましょうか」


大丈夫だ、と曖昧に首を振ったが、心配顔の二人に促され、光たちは屯所へと元来た道を引き返した。
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