新撰組のヒミツ 壱
「……こう言う訳だ。稽古に押しかけてすまない、井岡君。出来る限り邪魔はしないようにする」


すまなそうな顔で謝る永倉が、光の目にはここにいる幹部の内、唯一の常識人に映る。


原田や藤堂、永倉を纏めて“三馬鹿”と呼ばれていることを知らない光は、思わず尊敬の目を向けるのだった。


「では沖田さん、原田さん。試合をしませんか。光の指導にもなりますので」


背後から聞こえるのは、訛りの無い、耳慣れた山崎の声だった。


監察方は、任務や平隊士と話す時には、極力訛りを出さないようにする、という事を山崎から聞かされていた。


あるいは、信頼出来ない人物の前。


近藤や土方、沖田に、たまに訛りが出ている。それは恐らく信頼の証なのだろう。


「やる、やる! 一番は誰だ?」


「なら左之、僕としませんか?」


「え゛……俺と総司が?」


「なんです、怖いんですかー?」


< 136 / 341 >

この作品をシェア

pagetop