新撰組のヒミツ 壱
クスクスと冷たく笑った沖田は、わざとらしく原田を挑発する。相当に性格がひねくれていると言って良いだろう。


だが、原田は挑発に乗った。

「怖いわけねえだろ!」


2人はそのまま道場の中心に行くと、竹刀を取り出す。そして審判の合図もなく、勝手に試合を始めてしまった。


「――先程の威勢はどこに行っちゃったんですか、原田さん?!」


わざとらしく“原田さん”という沖田に、原田は悔しそうな声を上げた。


「……るせえよ!」


まるで完成した芸術品――まるで舞――のような剣舞で原田を追い詰める沖田。


力は勝っている原田だが、得意な武器は槍。巧緻な技と繊細な体捌きは、真似できる物ではない。


いつの間にか防御に専念する原田は、焦ったように距離を取ろうとするが、それを逃がす沖田ではなかった。


やがて、胴一本が決まる。


「――そこまで。勝者、沖田総司」
染み渡るような山崎の声が響いた。

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