新撰組のヒミツ 壱
――反射的に動け――


山崎にそう言われて、先生も似たようなことを言っていた事を思い出した。


『――考えて戦ってたら、動きが遅いんだよ。自然と体が技を出すようにしなきゃなんねえ。侍には勝てても、忍にはまず勝てないからな。意識して技を繰り出すんじゃなく“無我の境地”だ。それが出来たら師範になれる力量なんだが――』


まあ、てめえには無理な話だろうがな。


フンと鼻で笑った先生に対して、当時の光は地団駄を踏んだ。そして、さらなる飛躍を求めて、稽古に励んだのだ。


(――ああ、忘れてた……)


同門の山崎は、覚えていたのか。

もしかしたら、それが速さの大きな差になっていたのかもしれない。


「無我の……境地」


「そうだ」

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