新撰組のヒミツ 壱
いつの間にか光の背後に立っていた土方は、光の顔を舐めるように見て冷笑する。喧嘩を売っているのか、と思うほどに冷たい態度だった。


だが、しばしの沈黙ののちに土方は表情を和らげた。


「嫉妬だろう――。
だがまあ、外見は関係ない。大切なのは武士であろうとする誇り……武士らしくあろうとする己の信念だ。

……それがお前にはあるか?」


どうなんだ、と言いたげに見る土方。


武士。武士とは、武芸をおさめ、軍事に従う気高き者を指す。
その厳かな響きが耳を通り過ぎ、光自身の核を大きく揺さぶった。



武士らしくあろうとする己の信念、か。



「……信念なんて大層なものではありませんが……私はただ自らに従って戦います。誰に言われようと、私以外にそれを変えさせるつもりはありません」


一瞬だけ泣きそうな顔をした光だが、すぐにどこか冷たい表情になった。


「……私は生きたい……」


止まらない。最早、光には自分の口から発せられる、抑えつけていた感情を止める術を持ってはいなかった。


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