新撰組のヒミツ 壱
(こりゃあ……野郎共が騒いだり嫌な噂も立つわけだな……)
なぜか後ろめたくなり、自分が悪いことをしているような気がした土方は、光の身体から手を離した。
眼下には、土方の着流しにすがりついて弱々しい声で寝言らしき言葉を呟く光。きっと、先生という師の夢でも見ているのだろう。
――チッ……餓鬼が……。
と、苛立ちを感じた。
「山崎……悪いが俺はもう寝る」
「――はい……報告は如何しましょうか」
「明日にしろ。じゃあな」
首を横に振ると、山崎は下がる。
「はい。お休みなさい」
大声で騒いでいる芹沢らには一言も触れず、山崎のみにそう告げ、力ずくで引き離した光を山崎に託した。
その最中で目を覚ました寝ぼけ眼の光は、頭が働かないのだろう、状況を理解出来ずにぼんやりとしている。
普段は切れ者で食えない目の前の監察方が、そのようにしているのを見て、土方は可笑しさを感じた。