新撰組のヒミツ 壱
(……ひとまず井岡の指導力がどれほどか手並み拝見だな。

芹沢の悪行……。

それに入洛する浪士が増えてやがる。市中見回りの強化も必要だ……。

大物長人が潜んでいる噂がある、山崎が今日行った長屋の報告を聞いて……。


ああ、頭が痛い――……)


身体は睡眠を欲している筈だが、脳は勝手に溜まりに溜まった仕事のことを考え始める。あまりの仕事の多さに目まぐるしいものを感じざるを得ない。


(どうして……世の中っていうもんは上手く行くようにはなってないんだろうな)


誰にも見えないように襖を閉め、ひそやかに笑う。それは普段の土方からは想像もつかない、まるで儚く消えてしまいそうに淡い微笑みだった。


力も。
名誉も。
地位も。


――ただ指をくわえて待っているだけじゃあ、この手のひらにそんなものが自ら収まってくることはない。


汚くても、力ずくでも。
それを手中に収めてやるんだ。


近藤さんのために。
――俺は鬼なのだから……。



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