新撰組のヒミツ 壱
土方がその部屋からいなくなり、酒のせいでぼんやりとしている光を支えていた山崎の元に、斎藤が静かに歩み寄ってきた。


少し距離を置いた場所から、斎藤は山崎に呼びかける。
「……山崎」


「どうかしましたか……斎藤さん」


問われた斎藤は、珍しくもフッと口元を緩めると、山崎の腕に支えられている光を見下ろした。


「……あまり、副長に先程のような事をさせるな。いつか女だと知れるぞ」


女、という単語に山崎は息を呑んだ。そこで以前光が言っていた事を思い出した。


「……貴方には知れていましたね」


「初めの巡察の時だ。胸を隠せても骨格を変える事は出来ないからな。よもや……と思って初めから疑っていた」


なんて事もない、とでも言いたげな口調で話す斎藤。そんな彼に山崎は疑念を抱いた。


「なぜ……。なぜ上に報告しなかったのですか? 誰よりも堅く規律を重んじる貴方が……何か理由がおありで?」


「光は……何らかの強い覚悟を持っているようだ。それに総司に勝った奴として、純粋に戦闘力が増えるのは良いことだろう」


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