新撰組のヒミツ 壱
そこまで言い切った斎藤は、いつものように表情を無に引き締める。そして山崎に少し近づくと、小さな声で囁くように話し始めた。


「副長ならば脱隊なりさせるだろうが……たいそうな手練れを手放すのは、やはり惜しい。この国を、会津の民を護るには大きな力が必要だ。


局長や副長が真実を知らねば、光にとっても壬生浪士組にとっても有益。


……俺は局長らに感謝をしているし、恩を返したい。だが盲従している訳じゃない。俺にも“護る”という信念がある」


――分からない。


考え方において、侍よりも忍に重きを置いている山崎には、武士が語る信念というものがよく理解できない。


それを信じて疑わない信条である、という意味は理解している。
だが、具体的に考えようとすると、ふわふわと実体がないようにしか思えないのだ。


守らねばならない規則。
必ず守ると決めた信念。


二つは似ているようで全く違い、戦いに勝ち何としてでも正確な情報を持ち帰る忍のごとき覚悟とも、また違う。

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