新撰組のヒミツ 壱
そのせいで己が死ぬことになっても、信念とは貫くべきものなのだろうか……?


目の前にいる気高き武士は、この国と民を命に替えてまでも護り、そのまま死んでいくことが本望なのだろうか……?


壬生浪士組に会津藩御預の身分を与えて下さった会津藩主・松平容保。


彼の為、民のためなら死すらも厭わぬと?


山崎の持つそれとは違う。


屈辱的でも無様でも生き延びて、局長や副長に確かな情報をもたらす。そして、彼らが安心し、思う存分に隊士たちを動かせるようにすることだ。


――斎藤とは根本的に異なっている。


「成る程」とだけ呟きを漏らした山崎は、未だに注視してくる斎藤の視線から逃れるように、重い視線を地に落とした。


腕一本で支えていた光を立たせようとするが、光は酔いが醒めきらないようで、足腰が立たなかったようだ。


顔はうっすらと上気している。


(阿呆か……。ほんま、何でこないに正体無くなるまで酔わせたんや。


ま、芹沢局長やろな……ガツンて言うて喰らわせてやりたいわ……)

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