新撰組のヒミツ 壱
第6章.覚悟というもの
井岡先生
――1――
「――遅い! 脇を開きすぎるな、少し締めて力を入れろ!
――莫迦者、力を入れすぎては敵に隙を与えるだけだ! そこ、このくらいで倒れる軟弱者なら、斬られても文句は言えないぞ!」
8月中旬。壬生浪士組屯所内にある道場では、まるで鬼が咆哮しているような、何とも凄まじい怒号が響き渡っていた。
普段の少し低めの澄んだ声とはかけ離れた、威圧感のある声である。
「強くなりたいのなら何も考えるな!
死にたくなければ決して躊躇うな!
本能のまま斬れ!」
ガンッ!
竹刀を床に打ち据えるその鬼。
――井岡光だった。
しばらく前、土方から隊士に稽古を付ける事を頼まれ、一、二、三番隊以外の隊には、指導を受け持っていた。
今日は四、九番隊を受け持っている。