新撰組のヒミツ 壱
最初に光の間合いへと躊躇なく、大胆に飛び込んできた影があった。


やはりというべきだろうか“魁先生”という異名を取る藤堂平助だった。


だが、背後に竹刀を向けると、見計らったように正面から松原が打ち込んでくる。


まるで実戦のように、一切の躊躇がない刺突が面に襲いかかってきた。


(流石、組長たちは恐ろしいな……。油断をしたら負けるかもしれない……)


藤堂の竹刀の軌道を見極め、やっとの事で竹刀を避けたが、危険は去っていない。


鋭い松原の突きが光の胴目掛けて放たれたが、光は竹刀で弾き返し、それの軌道を少し変えた。


「くっ……そ……!」


剛力である松原でさえ、少し気をつけて受け流せば、簡単に軌道は変えられる。


戦いは力押しで決まるわけではない。


否、力が拮抗した者同士の戦いでは、最終的にそれによって勝敗が決することもあるだろう。


だが、弱者もしくは強者との戦いでは、力が全てではなく、技、速さ、正確さ、戦いの経験が求められる。


(……まだ剣道の意識が拭えない、か)


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