新撰組のヒミツ 壱
兄弟弟子
京の街に出た時、山崎は出来るだけ無表情や平然とした顔を貫いていたが、内心では心臓の高鳴りが収まらなかった。
(……あかんなぁ……こらあかんわ)
胸の中では、何かが軋むような音が鳴っていた。ギシギシと耳につき、妙に胸元辺りが締め付けられるように甘かった。
幻聴の筈だが、身体の芯から全身を強く揺さぶるような音である。
誘ったのは山崎だが、特に何かをするという用事はない。ただ一緒に京の街に出掛けたかっただけだ。
――餓鬼やないか……。
うぶな子供のように、胸を高鳴らせる自分自身に冷たく嘲笑すると、隣を歩いている光に目をやった。
表情は普通だが、雑貨を売っている店を見て、光はその瞳を輝かしている。
その店には簪(かんざし)やら櫛、今流行りの匂い袋などの女子が喜びそうな小物が所狭しと並べられていた。
「……欲しいんか?」気がつけば、無意識の内にそんな言葉が口をついて出ていた。