新撰組のヒミツ 壱
「……成る程」


体に入れていた力を抜き、光はゆっくりと息を吐く。まるで今まで息をしていなかったかのようだ。


なぜ光がこんな風に妖刀“蒼霞”の事について尋ねているのか。噂に聞いたことか、はたまた実物を目にしたのか――。


何かを考えているような表情を見れば、それを聞くことは憚(はばか)られた。


ただ、光は短刀を購入しにきたのではなく、この事を聞くためにここに来たのだろう、という考えを頭に浮かばせる。


――あくまで短刀はついでではいか、ということだ。


「……それにしても――どこで聞いたんです、その話。刀鍛冶と侍くらいしか知らないはずなんだがねェ……」


「ああ……こんな形(なり)をしているが、一応侍でね。まあ、常日頃からよく商人(あきんど)に間違われてしまうんだ」


不思議そうな表情をして言う店主に苦笑いをする。まるで豪商の若旦那のように、光は身に着けた着流しの襟をつまんでそう言った。


それを見た店主は目を見開いて、山崎と光の顔を驚いたように何度も見つめた。


「……そうだったんですか。すみません」


「いや……話してくれて礼を言う。それと、手間を取らせて済まなかった」


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