新撰組のヒミツ 壱
壬生浪士組に誇りを抱いている山崎烝という男は、大切に思う存在――光にさえ決して容赦をしない。


『守りたい』という気持ち。
『出ていけ』という気持ち。


そのどちらにも嘘はない。相反する気持ちを同時に抱き、山崎は光に痛烈な言葉を投げかける。


「……男の格好しよってもお前は“女”やからなぁ。お前に刀は合わん」


ピクリと背中を震えさせた光は、山崎と目を合わす事が出来ずに下を向いた。


「……無理なんやったら去ね。そうやないなら早よ屯所に戻れ」


突き放すように胸倉を掴んでいた手が離された。その冷たい動作によって、光は少しよろけてしまう。


だが、山崎はそんな光を無表情で見て、直ぐに背中を向けて去ってしまった。







冷たい言葉。
冷たい所作。
冷たい視線。


目頭が熱い。


気付くと、頬には幾筋にも涙が伝い、いくら拭ってもこぼれ落ちる。地面に染みを作る涙は一向に止まらなくなっていた。


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