新撰組のヒミツ 壱
声を押し殺し、顔を歪めもしない。無表情でただ涙を流している光。


(私、は……)


どうすればいいのだろうか。
何のために今日まで生きてきたのか。


答えは簡単だ。


――復讐。先生の命を奪ったあの男を、この手で斬るためだけに生きてきた。それが嘘偽りのない真実であり、全て。


タイムスリップは楽しいことではない。なぜ好き好んで“斬り捨て御免”が横行する幕末動乱の時代に来なければならない?


侍。忍者。


テレビやマンガで見るそれ。しかし現実はいつでも血の色に染まっていて、綺麗に脚色されたそれとは、何から何まで違った。

出会い頭で“怪しげな奴だ”と、いつ斬られても文句は言えぬのに、先生は躊躇いもなく光を助けた。


この時代にタイムスリップという非科学的な経験をした光に、その手を差し伸べてくれた優しい人だった。


また、口が悪い皮肉屋だったが、無粋なことは何も聞かず、衣食住を提供し、不器用ながらも父親のように守ってくれた。


やがて、光は決意するようになる。


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