新撰組のヒミツ 壱
素直に言うことを聞くつもりなど、さらさら無かった光は、すぐに立ち上がって外に出ようとした瞬間。


ドンッ! と言う音がして何かにぶつかるような衝撃を感じた。


「……わっ――!」


再び倒れそうになった光は、目を瞑り衝撃に備えて体を丸めるが、何時まで経ってもそれが来ることは無かった。


「おい、大丈夫か」


そろりと目を開けると、目の前にはもう一人の局長である新見錦が、光の手首を掴んで倒れないようにしていた。


「すみません、新見局長……」


謝った光は上体を起こすと、土方の指の時同様、新見の手からさり気なく逃れる。


近くでよく見ると、新見は土方よりも若いようだった。


あまり特徴のない顔の造形で、監察の方が向いているのではないか……、と思ったのは光だけの秘密である。


「お前……今ここから出ようとしていたな。芹沢先生のお言葉が聞こえなかったのか?」


「勿論、聞こえていましたよ……ならば、私に何の用があると仰るのですか」


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