新撰組のヒミツ 壱
「新見、もうよい。下がれ」


「はい、失礼致します」


従順な返事をした新見は、光の隣を通り過ぎる寸前に冷たい一瞥をくれると、芹沢に一礼してどこかへ行ってしまった。


「待たせたな。まあ座れ」


鷹揚に言った芹沢は部屋の上座に座る。嫌々ながらも芹沢の正面に光が座ると、光の斜め後ろに女が音もなく座った。


「井岡、その者は儂の妾だ。名を梅という。貴様に会いたいと申しておった故、連れて参った。仲良くしてくれ」


仲良くしたくもない、と光は思った。しかし、逆らうわけにもいかず拳を畳につけて笑みをたたえると、それを軸に少し後ろを振り返った。


「……私は井岡光と申します」


「梅です。お梅とお呼び下さい」


「では、お梅さんと」


綺麗な人だ、と感じた。
白魚のように白い手。艶やかな髪に、うっすらと赤みが差した頬。濡れたような唇は大人の色気が漂っている。


隠しているのだろうが、言葉の端々には京訛りが感じ取れ、それがさらに梅の気品と美しさを引き立てていた。

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