新撰組のヒミツ 壱
穏やかな口調。少年が夢を謡うように、芹沢は優しい言葉を投げかけた。


「……私は此処にいてもいいのですか……? 本当に、女の身である私が留まる事を許す、と?」


光は細い声に疑念を乗せた。


「そうだ。だが、此処にいたいのなら、復讐の為に刀を振るうのではなく、護る意志を以て人を斬るという覚悟を決めよ。


山崎烝はそう言いたかったのだろう」


それを聞いた瞬間、頭の中で渦巻いていた不安、怒り、嘆きなどの負の感情がスッと消えて行くのが分かった。


――殺しそのものが目的やない……。


(今なら分かる気がする……)


目を瞑った光は、口元をやんわりと和らげると、いつもの大人びた表情からは想像も出来ない、何とも幼げな微笑みを浮かべてみせた。


「……赦されるのなら、護りたいです」


「何を」
芹沢が悪戯をする餓鬼のように問う。







「この組と民を」

にやり、と光は挑戦的に笑った。


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