新撰組のヒミツ 壱
その後は大変な騒ぎようだった。


忌避していた筈の芹沢とすっかり打ち解けた光は、“芹沢さん”と呼ぶようになった。


そして、いつの間にか梅は光のことを“光ちゃん”と呼ぶようになっていた。


ちゃん付けで呼ばれるのは、女扱いされているようで余り気に入らなかったのだが、昔ほどの嫌悪感はない。


梅も加えた3人で沢山の事を話した。


「芹沢さん、何で私が女だと分かったんですか?」


「初対面のときから女のようだとは思っておった。だが、まさか女が沖田に勝つとは思わなんだ。だからお梅にお前を見させて確かめたのだ」


楽しそうに語る芹沢とは対照的に、梅は気まずそうに目を泳がせ、顔を俯けた。


「そうしたら、『可愛い女の子ですね!』とかなんとか……。えらくお前を気に入ったようでな。屯所には女がいない。儂はただ、お前たちに仲良くしてほしかったんだ」


喋る度に“芹沢鴨”という人物の鍍金(メッキ)が剥がされていく。光は人の話のみで、薄っぺらい表層を信じた己を恥じた。


しかし、恐喝紛いの金策や、噂になるほどの酒癖の悪さ、武士の誇りの欠片もない悪行を働いているのも事実。


知れば知るほど、芹沢は読めなくなっていく。

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