新撰組のヒミツ 壱

武士のようだ、と胸躍らせる者。

自分の活躍を想像する者。

命の危険を感じ、死を恐れる者。


百姓や商家出身が多い壬生浪士組の隊士は、初めての出陣に浮き足立っていた。


中でも、監察方は勘定方らと一緒に屯所で待機する組と、出兵命令に従う腕に覚えのある者の二組に別れたのだ。


組では実力者だと見なされている光は、出兵することになり、山崎は留守を預かる待機組となった。


いつもは何かと騒ぎを起こす芹沢も、今日は真剣な顔つきをしていて、筆頭局長に相応しい毅然とした態度だ。


光はたくさんの隊士たちの様子を、興味本位で観察していた。


(……浅葱色がいっぱいだな……。
今日が“あの”政変か……)


もちろん、光も与えられた羽織を着て、帯刀をしているのだが、流石に鎧は着ていない。


どこを見ても浅葱で埋め尽くされている屯所は、やはり、いつもより活気がある。


屯所の前に列を作りながら、光は刀の柄を指先で弄(いじ)っていると、いつのまにか隣に立っていた斎藤が、光の刀をまじまじと見つめていた。


< 258 / 341 >

この作品をシェア

pagetop