新撰組のヒミツ 壱

確信と疑い



        ――2――


九月に入って少しばかり日にちが経った頃のことである。昼餉を食べに広間に集まった隊士たちに、近藤と土方は声高に宣言した。


「皆、聞いてほしい! 我ら壬生浪士組は先月、御所の警備を勤め、隊士も随分増えてきたように思う。そこで、組内での決まりを作った!」


そこまで言った近藤は「土方君」と、余所行きの口調で呼びかけると、土方も「はい」と言い、一歩進み出た。




「局中法度

一、士道に背くまじき事
一、局を脱するを許さず
一、勝手に金策致すを許さず
一、勝手に訴訟を取扱うべからず
一、私の闘争を許さず

右条々に相背き候者
切腹申付べく候なり」




その瞬間、広間がざわめいた。


しかし、紙を読み上げた土方は、そんな騒がしさは関係なく、用は済んだとばかりに近藤の後ろに控える。


(局中法度、か……。土方副長もこんなに恐ろしいものを良く作ろうと決めたもんだ……)


現代人よりは理解があるつもりだが、この時代の生まれではなく、その上純粋な侍でもない光には、“切腹”というものは、自殺としか考えられない。


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