新撰組のヒミツ 壱
己が持ちうる中でたった一つの命を懸け、君主への忠誠と義を持ち、勇猛果敢に戦場を駆る――。
そして最期は待ち受ける死を恐れず、心服する君主の為、鮮やかに今生の命を散らしたいという、とても淡い願いを抱いた。
家臣とはこのような気持ちなのだろうか。君主の為なら、この命すら惜しくないと思える程の気持ちが。
家族や友、愛する者も――全てを後ろに残し置いて、ただ一人君主の為に自分という存在を賭けてみたくなるのだ。
これは無論、友情ではない。親愛の情でも恋慕の情でもない――君主への陶酔。
(……貴方が最後まで戦ったように)
強い眼差しに確たる意志を乗せ、小さくなった土方の背中に向ける。
(私も最後まで戦いたい……)
背中を向けて、床に置いてあった竹刀を手にとった。真っ直ぐに構えると、一撃一撃に、為せる最高の技の巧緻を込め、鋭い呼気と共に振り下ろす。
(この、世界で)
*
稽古が終わり、井戸で水を飲んでいた時だ。井戸の向こう側から、見慣れた黒の着流しを着た山崎が、こちらの方へ歩いてくるの見えた。
そして最期は待ち受ける死を恐れず、心服する君主の為、鮮やかに今生の命を散らしたいという、とても淡い願いを抱いた。
家臣とはこのような気持ちなのだろうか。君主の為なら、この命すら惜しくないと思える程の気持ちが。
家族や友、愛する者も――全てを後ろに残し置いて、ただ一人君主の為に自分という存在を賭けてみたくなるのだ。
これは無論、友情ではない。親愛の情でも恋慕の情でもない――君主への陶酔。
(……貴方が最後まで戦ったように)
強い眼差しに確たる意志を乗せ、小さくなった土方の背中に向ける。
(私も最後まで戦いたい……)
背中を向けて、床に置いてあった竹刀を手にとった。真っ直ぐに構えると、一撃一撃に、為せる最高の技の巧緻を込め、鋭い呼気と共に振り下ろす。
(この、世界で)
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稽古が終わり、井戸で水を飲んでいた時だ。井戸の向こう側から、見慣れた黒の着流しを着た山崎が、こちらの方へ歩いてくるの見えた。