新撰組のヒミツ 壱
屯所は女人禁制である。それは隊士が女に現(うつつ)を抜かし、士気が下がるのを防ぐため、土方が考えたことであった。


――女の光が言えることじゃないが。


何はともあれ、梅に会いに門まで行くだけだというのに、山崎は酷く険しい顔をし、拘束するような腕の掴み方をする。


「…………あんなぁ、光。よく聞き。会津侯から芹沢局長の暗殺命令が下ったんや。

……悪さばっかしやっとったさかい、会津藩にとっては目の上の瘤。悪評が幕府に知れる前に、早よ芹沢局長を消さなあかんねん」


小さな子供に言い含めるように、ゆっくりと話し始める山崎。光は神妙な顔をして聞き、門まで歩みを進める。


「――お梅はんは芹沢局長の妾。お梅はんも殺すんやから……仲良うして辛なるんはお前やで、光。金輪際、芹沢派と関わるのは止め」


「……分かってる」


光は小さく頷く。


わざわざ、山崎に言われるまでもなく分かっていた。未来で壬生浪士組の知識を積極的に得ていた光は、今後の大まかな歴史を知っていたのだから。


「それで――暗殺に参加するのは……土方副長、山南さん、総司、原田さん?」


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