新撰組のヒミツ 壱
名は井岡光(イオカヒカル)。
沢山の好奇の視線を無遠慮に向けられる光だが、周りの視線など気づかないかのように、ただ真っ直ぐ道を行く。
――まるでそのような俗物に興味はないとでもいたげだ。たとえそうであっても、彼の浮き世離れした外見が違和感を感じさせない。
光の瞳には少し退屈そうな色があり、物憂げで悩ましげな表情が僅かに垣間見えた。近くに女がいたら、恐らく騒ぎ立てていた事だろう。
その時、光が歩いていた前方から、平穏を破る女の金切り声と、それに伴って民衆のざわめき声が聞こえてきた。
只ならぬ雰囲気に、光は思わず口元を緩ませ、聞こえない位に潜められた声で、誰に言うでもなくそっと呟いた。
「――――――楽しそうだ――……」