新撰組のヒミツ 壱
先の世である光の世界には、“身内による暗殺”として伝わっているのだから、やはり露見するのだろうか。


だが仮にもしそうなったら、この組の行く先は絶たれるのではないか。光が知っていた程、後世に名だたるこの組のことだ。ならば成功するのだろうか。


やはり自分の目で見て確かめなければ、分かったものではない。


やがて、目の前に広がる光景に山崎は今夜の成功の色を見、口元がよく分からない感情で歪んでいくことを自覚した。


――――――…


壬生浪士組には財源が無かった。当初は会津から賜る禄もなく、土方によればここはいつも金欠だったという。


その時、立ち上がったのは芹沢たちだった。商家で恐喝紛いの金策を行い、結果的に壬生浪士組はその金によってやっていくことができたのだ。


――感謝はしている。そうじゃなければ俺たちは野垂れ死んでただろう。


以前、土方は山崎に語った。


……だがな、やり過ぎた。大和屋や島原の暴れっぷりもな。


汚名を被る勇気があったのがあの人たちだ。俺らは所詮は田舎者の百姓上り。ビビって何も出来なかったんだ。


綺麗事は言わない。俺たちは武士になりたい。近藤さんを押し上げてやりたい。


山崎。軽蔑したけりゃすればいい。


俺はこれを千載一遇の好機だと思っている。本当に武士として刀を振るえる、またと無い機会なんだよ、この一件は。


農民として見やがるあいつらをな。
恩はあるが命令なら斬る。


まるで鬼のような面を被り、確かな意志を含んだ眼差しを持っている土方。ただ頭上で彼の話を聞いていた山崎は、ふと視線を上げると、その強い目に惹きつけられた。


――――――…

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