新撰組のヒミツ 壱
報告をしに行ったとき、土方はそう硬い声音で言い、山崎に“芹沢派暗殺”の命令を朝廷や会津藩より下されたことを説明した。


(……俺らがどうにか出来るもんやないっちゅうことだけは確かなんや……)


自分を落ち着かせるために息を吐く。そして、光の背中を壁に預け、山崎は今夜の不安要素をそっと盗み見た。


ぎこちない笑みを浮かべる山南。いつも通りに見えて、少し違和感のある沖田。


洞察力が人一倍優れていると言われる監察頭の山崎から見て、彼らはどこからどう見てもぎこちなかった。


きっと、山南は仲間を斬ることに躊躇しており、沖田は芹沢のことを少なからず慕っていたため、心に迷いがあるのだろう。


(ま……土方副長が居るし。俺が心配するようなことなんかあらへんな。俺ら監察が動くんは明日から……。それまでは大人しゅうしとればええ)


逸る自分にそう言い聞かせ、両者が動きを見せるまで、山崎は光と同じように、背中を壁に預けて座った。


約四半刻(十五分)後、すっかり寄っている芹沢は、足元が覚束無いまま立ち上がり、大きな声を上げる。


「帰って飲み直すぞ……平山、平間、新見。いや、新見は死んだのだったな……」


あいつはいつも儂の後にいたからな……と、悲しげに笑う芹沢は背を向ける。


呼ばれた二人は、女と共にその寂しげな背中を追いかけ、残された隊士たちには、何とも言えない雰囲気が出来上がっていた。

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