新撰組のヒミツ 壱
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角屋にいた時から妙に胸騒ぎがしていた。
いつもならば、芹沢の行動を煙たがる近藤らは、おかしなことに、誰もが何かを隠すような無表情だったのだ。
“何かあるに違いない”
酔っていた芹沢だったが、頭の片隅ではそんなことを考えていた。そして、何故か胸元がざわめき、梅の顔を見たいとも思う。
奴らは何を……と、あれこれ考えているうちに、いつの間にか酔いは醒めた芹沢は、「帰って飲み直すぞ」と声を張る。
僅かに覚束ない足取りで八木邸に戻ると、部屋には梅が出迎えてくれ、「お帰りなさい」と、優しい笑顔を浮かべた。
綺麗で美しい女。いつも儚く、女として成熟した梅は、思わず喉を鳴らしてしまうほどの色気を持ち合わせている。
美しく危うい、桜のようだ。
「どうか、なさったのですか」
「……お梅」
彼女の優しい声音に、芹沢は不覚にも嗚咽が漏れそうになった。
乱暴者の自分をこんなにも心配してくれる女は、今までいなかったのだから。
しなだれるように、芹沢は梅の背中に腕を回す。まるで子供が母親に甘えるように、その温もりに安心する自分がいた。
女と見れば手に入れたくなる。女とは、ただ自分の欲を満たす存在であると。今までは、そう信じて疑わなかった。
――だが今はどうだろう。