新撰組のヒミツ 壱
天賦の才を持ち、鋭く攻め立ててくる刺客。そして、その隙を埋めるように、型に捕らわれない変則的な戦いをするもう一人の刺客。


彼らの連携は至極息の合ったものだ。
芹沢は自らの置かれた状況に、苦悶に満ちた表情を浮かべる。


三者は、放たれる攻撃が掠りでもすれば、たちまち敵の持つ圧倒的な力の前に、伏せてしまうのを理解していた。


これは剣道の試合ではない。


たとえ一本が入らなくても、相討ちで試合が終わる可能性だったあるのだ。一瞬一瞬の集中が、命を大きく左右することだってある。


――だが、どうしても負けられない!


強い意志を三者三様、刀に込めた。


襲いかかる沖田と片手で受け止める芹沢が、鍔迫り合いをしている間に、残った土方は芹沢を容赦なく刺し貫こうとする。


「……ぐっ……!」


喉の奥から発せられるように、低く唸る声。そして、柄を握る土方の手には、確かに肉を斬る独特な手応えがあった。


(捉えた! いや、脇腹か……?!)


信じられない程の力で抵抗する芹沢を、沖田がどうにか押さえ込んでいる。


その間、土方は平らにして突いた刀身に力を込めると、そのまま横になぎ払った。


「う、あぁぁあっ!」

        ・・
文字通り、半身に風穴が空いた芹沢。


しかしながら、土方は未だに構えを解かない。左脇腹を押さえ、床に崩れ落ちる芹沢を見下ろすと、慈悲の欠片もなく刀を振りかぶる。

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