新撰組のヒミツ 壱
しかし、そんな土方の皮肉にも、光は笑みを崩さずに余裕な表情を浮かべ、クスリと上品に笑ってみせた。


「申し訳御座いません、土方殿」


追い詰められているのは光のはずなのだが、どちらかというと、余裕のない表情をしているのは土方である。


最後にとびきり艶やかに笑むと、道場の外に歩き出した沖田の後に従って、道場を後にした。


外は涼しく、体の熱が奪われていく感覚が気持ちよい。


「――井岡さん」

「何ですか?」


問いかける沖田の声は、真剣そのものだった。何を言われるのだろう――と、自然と光も身構えてしまう。


「先程、どうして僕は負けたのですか?」


「………………」


「貴方は強い。僕が知る中で、一番の腕を持っています。でも……あの瞬間は勝ったと思ったんです。
     . . .
貴方が、消えるまでは」
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