新撰組のヒミツ 壱
だが、気配の主は監察方かもしれない。未だに正体が曖昧な光を監視している可能性だってある。


だが今や光は、正真正銘、監察方兼副長助勤である。こう言うのはなんだが、味方からの疑いの念は、不快なことこの上ない――。


「天井裏の者、出て来なさい」


姿無き監視者に光は苛立ち、冷淡に言い放つと、土方の悔しげな舌打ちの音が聞こえた。


――やはり、貴方の指示か。


ちらりと横目で顔を歪める土方を流し見る。どうやら土方に隠すという意志は存在しないらしい。


そう考えていた時だ。天井の板が外れて、黒装束を身にまとう男が音もなく飛び降りてきたのだ。


(…………っ! 速い……!)


「流石……俺の気配なんか、最初っからお見通しっちゅーわけやな」


やけに訛りのきつい男である。布で顔を隠しているため素顔は不明だが、感じる雰囲気はまだ若い。



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