新撰組のヒミツ 壱
――近藤の言うとおりだ。数多くある流派の中でも、“無敵”と断言する程の流派が無名の訳がないのである。


だが一つだけ、無敵の流派が無名だという可能性があることを考えるに至った。


例えば人斬りのように、出会ったが最後、死を以て人斬りの顔を知るものは、文字通り、この世から消える。


つまり、戦った流派は潰されると言うことだ。それ故に知る人ぞ知る“無敵の流派”と呼び、評しているのかもしれない。


そこまで考えて、土方はふと考えた。


(井岡の出身は、どこの国なんだ?)


言葉には、これといった訛りが見当たらなかった。丁寧な言葉遣いに、温厚な物腰。そして訛りのない発音――。


(もしかすると……本当に良家の息子かもしれないな)


もしかしたら、とんでもないヤツを抱え込んだのかもしれねえ……、と土方は苦い表情を浮かべた。


井岡は既に仲間だ。


だが山崎には、組の為に全てを吐いて貰う必要がある。腹心のように信頼を置いている山崎だからこそ、土方は秘密を作らせないようにしている。


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