新撰組のヒミツ 壱

何故山崎が偽名を使っていたのかは知らない。もしかしたら、正当な理由があるのかもしれない――、と自分を慰め、嫌な現実から目を逸らす。


――偽名。それは、俺はお前の知る御太郎じゃないと、山崎から遠回しな表現で拒絶されたように感じた。


予期せぬ再会とはいえ、二年ぶりに会ったのである。しかしながら、山崎は光が再会の喜びを示す前に怒鳴りつけ、『何故ここに来た』と問うたのだ。


嫌われているのだろうか。
顔も見たくなかったのだろうか。


自己嫌悪に侵され、冷たい言葉に動揺した光は、抵抗を止めて山崎の顔を恐る恐る見上げた。


ああ――。


完全な早とちりだ。


御太郎と山崎の本質は変わっていなかった。優しく、強く、まっすぐで……。


彼の顔は少しも冷たくなんかない。


寂しそうで、傷ついたような顔で。


純粋に心配してくれたのだ――……。