新撰組のヒミツ 壱
こちらも刀を抜いて応戦したいところである。だがこの後は、久しぶりに甘味処にでも寄ろうかと考えていたところだったのだ。


なるべく、血を見たくはない。それに自分より遥かに弱い者を嬲るようなことは趣味ではない。
有り体に言えば、面倒事が御免だったのだ。


「刀を納めなさい。複数人が私のような無抵抗の者を斬るのですか? 貴方達も侍の端くれなら、そのくらいの分別はあるでしょう?」


「ッ……」


痛い所を突かれたのか、怒りと屈辱に顔を赤くし、刀を構えなおした浪士達。


――後、少し。


「それに……騒ぎを起こすと“壬生浪士組”がやって来ますよ。捕縛されたくないのなら……ね?」


光が微笑みながらそう言った瞬間。


視界の端に、浅葱色の羽織りを着た集団がこちらに急行しているのが見えた。


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