新撰組のヒミツ 壱
俺は光を、まるで妹のように可愛がっていた。そして、光は俺を兄のように慕ってくれていた。


いつからだろう。彼女に特別な想いを抱き始めたのは。彼女を恋しく思う気持ちを抱いたのは。


(せやけど――女を捨てて、男として生きてく言うてる光に、この想いを告げたらあかんやろ)


戦いに身を置く俺は、たとえ女の光に想いが通じたとしても、幸せにすることは叶わない。


それに、俺にとっての優先すべき一番は、この壬生浪士組だ。どうして道を示してくれた土方を裏切る事ができようか。


もし、山崎の親しい者を斬る命令が出たら、山崎は一片の迷いや躊躇も無く斬る。


監察の山崎にはそれが出来てしまうのだ。


いくらそれが焦がれた光でさえ、心の中では多少は躊躇すれど、結果的にはきっと斬るのだろう。


この恋は咲き誇る事なく、人知れず静かに散る。ひらひら……と、桜よりも儚く悲しい恋なのだ。


開いてしまった、甘く苦い恋心が詰まっている箱。


もう一度、しっかりと鍵をしよう。二度と開くことの無いよう、拾えぬ程遠くに鍵を投げ捨てて。
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