新撰組のヒミツ 壱
名前では呼べても敬語をとることはできなかった。これは心の距離感の表れである。つまり警戒心といったところなのだ。


「……お前とは恐らく同年代だろう。俺は光と呼ばせてもらう」


「はい」


斉藤一は生真面目な男のようだが、意外と積極的に話してくることから、友好的でもあることを知った。


そして斎藤が語る光の巡察の意義とは“出来るだけ巡察で斬らずに済むように”“周りに被害がでるのを防ぐように”ということだった。


他にも巡回路や不逞浪士の対処、非常時の時の説明を一通り受けると、光は気になっていた事を聞くことにした。


「私の隊服は……あるのですか?」


「あることにはある。だが、お前は普通の隊士とは違う。済まないが……目立たない服を身に着けてくれ……」


「はい」


確かにな、と一つ頷く。
目立たない服――恐らく忍装束だろう。袴と着流ししか持っていないため、山崎に借りるしかないようだ。


それ以外に訊くべき質問は無かった為、光と斎藤はその場で別れた。



「では一さん、また後で」


「ああ」

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